私の生家は写真館、明治生まれの祖父が開業した時代にはカメラは誰も持っていない時代。機材を独学で勉強し、好奇心旺盛でハイカラな祖父でした。父はそんな祖父の背中を追い、私が物心ついたころには営業写真館として経営しながら、コンテストでは自分の芸術写真に没頭し、数々の賞を受賞するカメラマンでした。

30 代の頃の父が撮った数々… 今見ても色褪せず美しい。 スタジオや自宅、父の作品に囲まれた環境で育ちました。
写真館に訪れるお客様はさまざま。当時は人生の節目に写真館で撮影するというのが記念日の一番のイベントでしたから、家族写真、ウエディング、七五三、成人式、卒業写真、思い出記念日いろいろ…。良い作品が出来上がると、大きなパネルにしてお店の ウインドーに飾る。ウインドーは父のアートギャラリー。パネルを配置したあと、外から眺めて満足している姿は日常的で私も毎回新しくウインドーが変わるのが子供ながらにワクワク楽しみでした。
私は父の撮るポートレートが何より好きでした。父は人の魅力を魅せる天才。レンズ越しの “一瞬は永遠“。誰もが魅力的な表情を持っている。被写体は撮る者によって全く違う人格者に見える。父の感性で切り取られた人々の表情は今も鮮明に覚えている。その瞬間を切り取るシャッター音は写真も絵もおなじ。
私の感性で描くポートレート。そんな想いを込めてー。

谷本ヨーコ
Yooco Tanimoto | Illustrator

イラストレーター。セツ・モード・セミナー卒業。在学中より雑誌、広告媒体を中心に活動を始める。都会の男女のファッションイラスト、誰しものライフスタイル、日常のワンシーン。その何気ない特別な瞬間を切り取り、制作している。 尊敬するポートレート写真家はリチャード・アヴェドン、デヴィッド・ベイリー、父。 私の描く絵は人が多い。やっぱり私は人を描くのが面白い。その創作の始まりは初めて自分で企画した著書本「ニューヨーク・オーナーズ」から続いている。大好きなニューヨーク、刺激的なこの都市にあらゆる国の出身の人々が集まり、お店を構えるオーナーのストーリーに興味がありました。17 人のオーナーたちをインタビューしてみると、それぞれの人生は想像以上にドラマティック。誰もが人生の主役であり、オーナー。華やかな人生も、ささやかな人生も彩りは同じ。そんな一人一人のオーナーを描いていきたいと思ったきっかけでした。 「ピッティ・ピープル」はメンズファッションに興味を持ち、世界中の洒落者が集まるイタリアのドレスファッションの展示会ピッティ・ウオモを取材したイラストルポルタージュ。この本を出版してから、女性の私が表現するメンズファッションイラストが私の一つのスタイルとなり自信になりました。男性を描くのは面白い。 同時に難しい。心弾んでハイヒールを履けるのに タイドアップの嬉しみを知ることはできない。でも、私にしか描けないエレガント。その人の纏う空気を描きたいのです。

左「ニューヨーク・オーナーズ」 NY の始まり17 人のオーナーたち ポートレートイラストのはじまり
右「ピッティ・ピープル」 イラストレーターとして メンズファッションイラストの スタイルを確立したきっかけ
上「スナップ・レオン」表紙イラスト
下「レオン」本誌イラスト

フィレンツェで年二回開催されるメンズドレスファッションの展示会の「ピッティ・ウオモ」の公式本としての、著書本ピッティ・ピープルのブースを構えPR 販売し話題となった

左「ニューヨーク・オーナーズ」 NY の始まり17 人のオーナーたち ポートレートイラストのはじまり
右「ピッティ・ピープル」 イラストレーターとして メンズファッションイラストの スタイルを確立したきっかけ

フィレンツェで年二回開催されるメンズドレスファッションの展示会の「ピッティ・ウオモ」の公式本としての、著書本ピッティ・ピープルのブースを構えPR 販売し話題となった

上「スナップ・レオン」表紙イラスト
下「レオン」本誌イラスト